我が工房は、木工房シンプルという屋号ですが、時にはシンプルではないデザインも手がけてます。

変形六角形、格子の扉を配置したキャビネット。
レトロな雰囲気が漂います。

お客様からのご依頼で製作したこのキャビネット、実は、この形は今から10数年前に製作した、一つの実験的なキャビネットが元になっています。

その当時、私は門司港アート村という工芸集団に所属していたのですが、その時に地元振興団体から、門司港らしい家具を作ってほしいとの依頼により、レトロな雰囲気を持つキャビネットを作りました。

門司港アート村　レトロキャビネット


そう、門司港といえば海外航路の港基地として榮えた街で、あちこちにその痕跡が残っています。

最も賑やかだったのは大正時代で、当時流行っていたデザインがアールデコ。
これを日本流に解釈したものが、いわゆる大正レトロと呼ばれる意匠になっています。

キャビネットのデザインに際しては、大正レトロの象徴とも言える格子を基調として、当時の洋館の出窓をモチーフに細部を詰めていきました。

デザイン、製作とも大変でしたが、まだ駆け出しの私がおもいっきり背伸びをして、持ちうる最大限の技能を尽くした作品で、とても思い入れが深い反面、もうこのようなデザインを手がけることは二度とないだろう・・と思っていたものでした。

それがこの度、ホームページの隅っこの方に載っていた写真に目を留められたお客様から、同様のものを作ってほしいとの依頼があったわけです。

私にとっては、本当に思いがけないことで、嬉しく思うと同時に、さてどうやって作ろうか？　との戸惑いも。

慌てて当時の設計図を引っ張り出し、修正、訂正、変更などを繰り返し、デザインを改め、満を持して製作に臨んだのであります。

ご覧のとおり、扉は四枚。
中央は観音開き、左右斜めの扉も開けることができます。

左右には三角形（正確には台形）の移動棚も付いており、洋酒やフォトフレームなどを飾るとレトロな雰囲気が出そうです。

2014年月製作　お届先　福島県

中央には、メイプルのプレートにダイヤマークのウォールナットをあしらいました。
真鍮の取っ手と合わせて、レトロな佇まいです。

十数年を経て復活したレトロキャビネット。
レトロな雰囲気ながらも、現代のお部屋にもよく馴染むことと思います。

シンプル以外も大歓迎・・
ご興味をお持ちの方、是非お問い合せください。


・・・作るのは大変なんですけどね・・