素材　 ：　ウォールナット　メイプル
仕上　　：　オイル仕上げ
サイズ　：　800×350×1400（高）

ホームページをご覧になりお問い合わせをいただきました。
最初はお電話にて・・・「仏壇の代わりになるものができないだろうか？」とのご相談でした。

「むむむ？」　さすがに即答もできず、後日ご自宅へお邪魔させていただき、いろいろとお話を伺いました。

思うところあって仏教から距離を置くことに・・・檀家からも退会されたとのこと。　
それに伴って仏壇が不要になる。　しかし、位牌まで処分することはさすがにできない。　また、思い出の品々や写真などを飾って見えるようにしておきたい。　とのご要望です。

デパートなども回られたそうで、最近流行の（？）現代風仏壇や洋風仏壇（すごい名前だが）なども見てみたが、どれも今ひとつ。　　ということで、ご相談をいただいたしだいです。

「う〜ん！！」
さすがに考え込んでしまいました。

基本的にはキャビネットという形になるのでしょうが、本棚のような、飾り棚のような、ましてや食器棚のようなデザインは、このキャビネットの性格を考えるといかがなものか？？
また、宗教色を感じさせるような意匠は避けたいとのお客様のご要望です。

スケッチを描いては破りの繰り返し・・・

これは・・軽い感じですね〜
これは・・重い感じですね〜
これは・・なんか変ですね〜
これは・・ごちゃごちゃしてますね〜
これなら・・ちょっと違うかな？
これでどうだ・・墓石みたいになっちゃいましたね！！

なんていう会話を延々と繰り返し、打ち合わせは5回、6回と長丁場になりました。

だんだんと煮詰まりを感じ始めた頃、グラフ用紙の上に描いた一本の線でお客様と私のアンテナが一致し、
「うん、これだ、これがいい」
ということで決定。　あれよあれよと言う間にデザインが決まりました。　　

幅150ミリ、厚さ45ミリの重厚なウォールナットの柱を基本にして框組みで本体を構成しました。　

外装は全てウォールナットを使いましたが、内装の側面、および上下面にはメイプルを用い、コントラストをつけるのと同時に、内部が明るく見えるようにしました。　　これはお客様のアイデアです。

つまり、このキャビネットは内外装の二重構造となるのです。　その間は空間のみ・・・いわゆるデッドスペースがたくさんあります。　　キャビネットというもの、普通は限られたサイズでどれだけ多くのスペースをとるかという設計をしますが、このキャビネットはその常識と正反対の設計となりました。

もったいない・・・という気もするのですが、この隠れた空間が、ご先祖様の思い出を飾る母体としてのなにかを象徴しているような・・・そのような気にもなります。　　

扉はガラスの一枚建て、5ミリの強化ガラスを用いました。

扉、引出しなど、取っ手は一切設けずすっきりとしたデザインに・・・引出しは左右の隙間に指を掛ける設計です。

また、引出し上部にはスライド式の香炉台を取り付けました。　

その他、扉内部に隠し収納場所をつけるなど、とにかくこだわりぬいた造作がたくさん。　　まさに、オンリーワンの逸品といった仕上がりになりました。

この中で、ご先祖様も落ち着かれるでしょうか？
いや、きっとご満足いただいていることでしょう。